ショパン:ノクターン 第1番 変ロ短調 作品9-1

♪今日の試聴BGM♪

ショパン作曲:ノクターン 第1番 変ロ短調 作品9-1 by Tomoro




Chopin : Nocturne No.1 in B flat minor Op.9-1/Tomoro
● 作曲年:1830~1831年
● 出版年:1832年
● 献呈者:マリー・プレイエル夫人


 【ジャンル解説】
ノクターン(Nocturne)と言うのは英語ですが、同じ綴りのフランス語「ノクチュルヌ=夜の」を語源とし(※もっと遡るとラテン語の「Nox=夜」に行き着くのだそうです)、音楽的な意味合いとしては、イタリア語の「セレナータ」や、あるいはドイツ語の「セレナーデ、ナハト・ムジーク」と同じ流れを汲むもので、元々は、親しい人や称賛すべき人のために、夕方や夜に野外で演奏される音楽の事です。
日本語では「夜想曲」と訳されています。
現在では、恋人のために歌う音楽と言うイメージが強いかもしれません。
これを最初にピアノ曲にして「ノクターン」と名付けたのは、アイルランドの作曲家兼ピアニストのジョン・フィールド(John Field 1782-1837)でした。
ショパンは、このフィールドの作品から直接影響を受け、自らもノクターンを作曲するようになりました。
現在では、「ノクターン」と言えばショパンの代名詞的な音楽ジャンルとも言えるでしょう。


 【作品解説】
実はこの《ノクターン 第1番》については、周辺情報やエピソードと言ったものが何もありません。
《作品9》としてまとめられた3曲の中ではもっとも評価が高いものの、人気と言う点では圧倒的に《第2番》が勝っているからでしょうか、とかく地味な印象を受けがちではありますが、ただこれだけ優れた作品ですから、そのうち《第20番》のように映画か何かに使われてブレイクする日が来るかもしれないですね。

この作品は1830年から翌1831年(※当時21~22歳)にかけて作曲されたとされていますが、ショパンはこの時期、この《第1番》を含めて5曲ものノクターンを書き溜めていたと考えられています。
それは《第1番》から《第5番》までの5曲で、全て翌1832年のパリ時代にすぐに出版される事になりますが、どれもいずれ劣らぬ名曲ばかりです。
ショパンは、ウィーン時代には演奏活動に関してこそ不遇に見舞われてはいましたが、こと作曲に関しては、水面下ではいよいよその本領を発揮し始めていたのです。
おそらく、演奏会が開けないのであれば、せめて貴族達の催す夜会などで評判を得ようと、その道を模索していた結果なのかもしれません。

実際に、ショパンはパリに渡って最初のパリ・デビュー公演を成功させる訳ですが、ショパンがその後に最初に出版したのは、その時のメイン演目である《ホ短調・協奏曲》ではなく、ウィーン時代から書き溜めておいた《4つのマズルカ 作品6》、《5つのマズルカ 作品7》、そして《3つのノクターン 作品9》と、ピアノ独奏用の小品ばかりを立て続けにだったのです。
そして、中でもノクターンは瞬く間に貴族のご婦人方の心を捕らえ、今で言うところのヒット曲となります。
ショパンは一躍パリの社交界の寵児となり、レッスンの依頼も多く受けるようになり、それによって彼は、苦手な演奏会を開かなくても、作曲とレッスンだけでも高い収入が維持できる程までになるのです。

こうして考えると、ある意味ショパンは、時代の流れと共に変化するピアノ音楽のニーズを敏感に察知しつつ、それに応える中で、同時に新しいピアノ音楽の可能性をも追求していったのだと言えるのではないでしょうか。


さて、それでは、ショパンがこの《変ロ短調》のノクターンを、記念すべき《第1番》に据えたのは何故だったのでしょうか?

それは、この作品が、ショパンのノクターンの雛形を示すと共に、そのジャンルの水準をも確立するものとして相応しいと考えたからだと思われます。

ショパンの他のジャンルのおのおのの“第1番”を見比べてみても分かるように、マズルカ、ワルツ、ポロネーズ、スケルツォ、バラード…いずれの“第1番”もその考えに則っており、そこを基準にして“第2番”以降で様々な変化を施しつつ進化発展させていっている事が分かります。

この《ノクターン 第1番》に見られるように、分散和音の上に美しいメロディが流れるように歌われると言うスタイルは、まさにフィールドが創始したノクターンそのものです。
それゆえ、《作品9》の3曲はどれもフィールドの模倣から抜け切れていないと評されるのが一般的ですが、しかしながら、そのメロディの持つインパクトや説得力、全体の構成力と言ったものはすでにフィールドのそれを凌駕しており、メロディ・メイカーとしてのショパンの才能の開花を告げるものだと言えるでしょう。
ショパンがほとんどのノクターンを明確な三部形式で書いているのも、ややもするとBGM的なサロン・ミュージックになりがちなこのジャンルを、もっと芸術性の高いものにしたいと考え、そしてそうなりうるのだと言う事を示したかったからなのではないでしょうか。

ショパンのノクターンとフィールドのノクターンとを聞き比べてみた時、私が抱いた感想は何かそのような感じだったのでした。

ちなみに私は、謎とされているショパンの生年月日に関しては、「1809年3月1日」説を採っております(※その根拠はこちらで)。
なので、本稿ではそれに則ってショパンの年齢を数えています。


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