ショパン:ワルツ 第10番 ロ短調 作品69-2 遺作

♪今日の試聴BGM♪

ショパン作曲:ワルツ 第10番 ロ短調 作品69-2 遺作 by Tomoro




Chopin : Waltz No.10 in B minor Op.69-2 /Tomoro

● 作曲年:1829年
● 出版年:1852年
● 献呈者:ヴィルヘルム・コルベルク、プラテル伯爵夫人


 【ジャンル解説】
ワルツ(円舞曲)は、西オーストリア、南ドイツ(ハプスブルク帝国)を起源とする、比較的淡々としたリズムの3拍子の舞曲です。
ヨーゼフ・ランナー(Josef Lanner 1801-1843)はオーストリアの作曲家兼ヴァイオリニストで、「ワルツの始祖」とも呼ばれています。
ヨハン・シュトラウス1世(Johann Strauß I(Vater) 1804-1849)はオーストリアのウィーンで活躍した作曲家、指揮者、ヴァイオリニストで、ウィンナ・ワルツの基礎を築いた事から「ワルツの父」とも呼ばれています。


 【作品解説】
《ワルツ 第10番》は、ショパンが初めてウィーン訪問を果たした1829年(当時20歳)以降に、突如として次々と書き始められた一連のワルツのうちの一つです。
ナショナル・エディション(エキエル版)の ワルツ集(死後に発見された作品)では、《ワルツ 第15番 ホ長調 遺作》に次ぐ2作目として掲載されています。
この曲は、ショパンの死後、友人でもあったフォンタナによってまとめられた遺作集に収められる形で初めて公表され、この作品番号はその際にフォンタナが付けたものです。
本稿で使用している楽譜は、そのフォンタナ版によるものです。

ナショナル・エディションでは、この曲は、フォンタナ版を含め4つものバージョン違いが収録されています。
編集者のエキエルは、いつものように、最も新しく記譜されたものこそが、最もショパンの意思が反映された最終決定稿であるという解釈の元にそれらを並べているようです。
しかしながら、《ポロネーズ 第10番 ヘ短調》の項でも説明したように、私は、その解釈は根本的に間違っていると考えています。

ショパンは、行く先々で楽譜を求められ、その度に記憶を頼りに譜面を起こし、そしてその度に、その時の気分でアドリブ的に細かい変更を行っているのです。ですからショパンの自筆譜には、どれ一つとして全く同じものがありません。
エキエルに限らず、往々にしてポーランドのショパン研究家と言うのは、ショパンをあまりにも神格化しすぎ、絶対不可侵なものとして崇めすぎるがために、研究対象に対する態度が極めて主観的になりがちで、研究者として必要不可欠な客観性に欠ける嫌いがあります。
要するに、数々のバージョン違いは、単なる天才の気まぐれのようなものでしかないのに、それを、確固たる意志を伴った推敲や改訂であるかのように考えてしまう訳です。しかし実際は、これはそんな高尚な話ではありません。
その証拠に、たとえばこの曲にしても4つのバージョンを聴き比べる事ができますが、そのうちのどれが最も優れているかなんて、聴く人それぞれの好みで片付けられるような些細な差でしかありません。
その違いの多くは、細かい装飾音のあるなしや、付点のあるなしや、ペダル記号等のあるなしだったり、ちょっとした和声の違いだったりして、 要するに記憶を頼りに譜面を起こしたからこその結果としてもたらされたような違いであり、どれがどうでも一向に構わないようなものばかりで、明らかに別物と言えるような改訂を施してはいないのです。

つまり、それらはあくまでも一種のバリエーションでしかありませんから、最も新しく記譜されたものが必ずしもショパンの最終的な意志だとは言えない訳です。
もしもそれがショパンの最終的な意志だと言うのであれば、そのような重要な変更を、なぜ家族に知らせていないのでしょうか? 考えられない事です。
そうではなく、そのようなバリエーションがあるからには、必ずその元となる雛形がある訳で、問題にすべきは、その雛形に該当する版はどれなのか?と言う事なのではないでしょうか?

そう考えた場合、フォンタナ版が原本に使用した遺稿楽譜は、いずれも、ショパンの姉ルドヴィカを始めとする最も近しい関係者らが所有していた自筆譜や写しによるものですから、必然的に、それらを雛形と考えるのが最も自然だと言う事になるでしょう。
ただ残念な事に、それら原本は既に戦争等で焼失していまい、現在楽譜は残されていません。
それゆえ、それ以降に新たに発見された自筆譜がフォンタナ版と違っていたからと言って、よく言われているように「フォンタナが勝手に楽譜を書き換えていた」などと安易に解釈するのは、とんでもない言いがかりな訳です。

実際、フォンタナ版はどの曲であっても、特に違和感を感じる事もなく自然に耳に馴染むので、まさにその曲の雛形と考えるに相応しいものばかりです。
単に一番最初に聴いたからと言うだけの理由では、決してそうはならないのではないでしょうか。


ちなみに私は、謎とされているショパンの生年月日に関しては、「1809年3月1日」説を採っております(※その根拠はこちらで)。
なので、本稿ではそれに則ってショパンの年齢を数えています。


Copyright © Tomoro. All Rights Reserved.


ショパン:ワルツ集
ワーナーミュージック・ジャパン
カツァリス(シプリアン)

ユーザレビュー:

amazon.co.jpで買う
Amazonアソシエイト by ショパン:ワルツ集 の詳しい情報を見る / ウェブリブログ商品ポータル

ショパン:ワルツ集
ダブリューイーエー・ジャパン
ピリス(マリア=ジョアン)

ユーザレビュー:

amazon.co.jpで買う
Amazonアソシエイト by ショパン:ワルツ集 の詳しい情報を見る / ウェブリブログ商品ポータル

ショパン:ワルツ(全19曲)
ユニバーサルクラシック
アシュケナージ(ヴラディーミル)

ユーザレビュー:

amazon.co.jpで買う
Amazonアソシエイト by ショパン:ワルツ(全19曲) の詳しい情報を見る / ウェブリブログ商品ポータル

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 6

なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
ナイス
かわいい

この記事へのコメント

2012年11月23日 20:37
勉強になりました
トモロー
2012年11月23日 21:43
ぬえさんへ。
恐縮です。コメントして頂いてとても嬉しいです。どうも有り難うございます。

この記事へのトラックバック