ショパン:ポロネーズ 第10番 ヘ短調 作品71-3 遺作

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ショパン作曲:『ポロネーズ 第10番 ヘ短調 作品71-3 遺作』 by Tomoro




Chopin : Polonaise No.10 in F minor Op.71-3 /Tomoro

● 作曲年:1828~29年
● 出版年:1855年
● 献呈者:ティトゥス・ヴォイチェホフスキ、エリザ・ラジヴィウ公爵令嬢


 【ジャンル解説】
ポロネーズはフランス語で「ポーランド風」の意味があり、その名の通りポーランドの民族舞踏の一種です。
マズルカ同様、農民や市民によって踊り継がれていたものが、やがて士族や貴族階級にまで広がって洗練されていったと言われています。
行進曲的な色合いもあり、様々な式典等で踊られる事が多いようです。

 【作品解説】
前年、オーケストラを伴った作品をはじめ大作ばかりを手掛けていた反動か、この1829年のショパンは、一転して小品ばかりを書いています。

《ポロネーズ 第10番》は、ショパンの生前には出版されておらず、作曲者の死後、友人でもあったフォンタナが一連の遺作集の中に収めて出版しました。
この作品番号は、その際にフォンタナが付けたものです。
非常にメランコリックで内省的な曲で、のちの《ポロネーズ 第4番 ハ短調 作品40-2》に通ずるものがあります。


この曲についてショパンは、友人ティトゥス・ヴォイチェホフスキに宛てた手紙の中で次のようにコメントしています。
ショパンがアントニンのラジヴィウ公爵の館を訪問した際、ショパンは当家の2人のお姫様を相手に、ピアノを弾いたり教えたりしていたのですが、その時の様子を書いたあとに続けて、

「エリザ姫は僕の《へ短調のポロネーズ》に夢中で、僕が君の手からそれを取り戻して献呈するのを断れなかった。だから、どうか折り返し郵送してくれたまえ。僕は無礼者と思われたくたいし、かと言って、記憶を頼りにもう一度楽譜を書きたくもないのだ。たぶん元のとは違うものになるからだ。僕が彼女のために毎日あの《ポロネーズ》を弾かなければならない事から、君にもこのお姫様の性格が想像できると思う。変イ長調の中間部が特にお気に入りなんだ。
…(中略)…
くどいようだが、《ポロネーズ》を早急に送るのを忘れないようお願いするよ。」
(※1829年11月14日付の『ティトゥス・ヴォイチェホフスキ宛の手紙』より→全文はこちら


ショパンの時代は、ピアニストは公開の演奏会でも楽譜を見ながら弾いていたので、現在のように暗譜をする習慣はありませんでした。
ピアノの横に「譜めくり」をする人が控えていて、演奏者の合図に従ってページをめくってもらっていたのです。
※ちなみに、最初に暗譜演奏を始めたピアニストはクララ・シューマンだと言われていますが、当時それは極めて異端な行為と見なされていたそうです。

それでもショパンは、その時の気分でたいてい音を変えて弾いていた位ですから、この手紙にあるように、同じ曲の楽譜を2度書けば、2回目は決まって最初のとは違うものになるのも当然だったのです。
実際に、ショパンの自筆譜では、全く同じ内容のものが確認された例はありません。

さて、そうすると、最も新しい楽譜だからと言って、必ずしもそれが「最もショパンの意志を反映した決定稿」だとは見なせない事になるのではないでしょうか?

しかしながら、エキエルが編集したナショナル・エディションでは、常に、盲目的にその方針で貫かれているんですね。
この《ポロネーズ 第10番》もそうです。
なので、我々が昔から聴き慣れているフォンタナ版と、最新の研究によるエキエル版とでは、細かい音が所々違っています。
しかしそれらは、決して改訂稿などと言う大層なものでもなければ、決定的な改良でもなく、まさにこの手紙にあるように、どう考えても「記憶を頼りにもう一度楽譜を書いた」ために生じた違いとしか思えないような類のものなのです。
つまり、一聴して、新しいエキエル版の方が明らかに素晴らしいかと言うと、そうでもない。
仮にどっちもどっちなら、耳慣れたフォンタナ版の方が遥かに違和感がなくていいと言うのが、私の率直な感想なんですね。

なので、本稿ではこの曲はフォンタナ版の方を採用しています。


ところで、ショパンがここで言っている、このポロネーズを好むお姫様の性格とは、一体どんな風なのでしょうか?
おそらくは、たとえばお芝居を観に行くのであれば、喜劇を観て笑うより悲劇を観て泣く方が好き…と言った具合に、いわゆる“おセンチな女の子”とでも言った感じでしょうか。
そう言えば、彼女の父上であるラジヴィウ公爵は、素人ながら腕の立つチェロリストで作曲もするのですが、彼が曲を付けたゲーテの戯曲『ファウスト』も悲劇でした。
あるいは、自分が気に入ったものはとにかく欲しがる、ちょっとわがままなところのある性格なのでしょうか? だから毎日弾いてくれとせがまれ、その上楽譜を親友から取り返さなければならなくなった…と言う事なのでしょう。

ちなみに私は、謎とされているショパンの生年月日に関しては、「1809年3月1日」説を採っております(※その根拠はこちらで)。
なので、本稿ではそれに則ってショパンの年齢を数えています。


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