ショパン:ポロネーズ 第13番 変イ長調 遺作 KK IVa-2/BI 5

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ショパン作曲:ポロネーズ 第13番 変イ長調 遺作 by Tomoro




Chopin : Polonaise No.13 in A flat major Op.posth. /Tomoro

● 作曲年:1821年
● 出版年:1902年
● 献呈者:ヴォイチェフ・アダルベルト・ジヴニー


 【ジャンル解説】
ポロネーズはフランス語で「ポーランド風」の意味があり、その名の通りポーランドの民族舞踏の一種です。
マズルカ同様、農民や市民によって踊り継がれていたものが、やがて士族や貴族階級にまで広がって洗練されていったと言われています。
行進曲的な色合いもあり、様々な式典等で踊られる事が多いようです。


 【作品解説】
ショパンの《ポロネーズ 第13番》は、彼が初めて自分で楽譜を書いた作品として知られています。
当時ショパンが12歳の時で、この曲は彼の生前には出版されておらず、したがって遺作扱いになっています。
尚、こう言った作品を系統だって分類する手立てとして、ポーランドのショパン研究家クリスティナ・コビランスカ(Krystyna Kobylańska)による『作品番号のない作品目録』の分類番号「KK」があり、そこではこの作品は「KK IVa-2」とされています。
更に、 モーリス・J.E.ブラウン(Maurice J.E. Brown)がショパンの全作品に与えた作曲順の通し番号「BI」では、この作品は「BI 5」とされています。

この曲には初稿と改訂稿の2つの版があります。
ナショナル・エディションにはその両方が収められており、改訂稿の方を正式バージョンとして扱っていますが、一般によく知られているのは初期バージョンの方で、ここではその初稿版によっています。
両者の違いは、主に細かい装飾音や和音のあるなしなので、一聴してどちらが優れているとも言えず、弾く人、あるいは聴く人の好みで分かれるような類いのものでしかありません。
ですから、これは改訂稿などと言う大層なものではなく、単なる別バージョンと解釈した方が正しいでしょう。
初稿版の方は、すでに耳に馴染んでいるというのもありますし、何よりも、ショパンがピアノの恩師ジヴニーに捧げたのはその初稿版の方ですから、心情的にも私はこちらを尊重したいですね。


ショパンはこの曲の楽譜の表紙に、フランス語で次のように書き添えています。

“A・ジヴニー氏に捧げる、その生徒フレデリック・ショパンが作曲した、ピアノ独奏用のポロネーズ。1821年4月23日、ワルシャワにて”

この日付はジヴニーの命名日(洗礼名を授かった事を祝う日)で、つまりこれは、ピアノの生徒から先生への、ショパン流のグリーティング・カードでもあったのです。


ショパンのピアノ暦については、多くの伝記等で、まず母ユスティナが長女ルドヴィカに教え、そのルドヴィカがショパンに教えたのが始まりと伝えられていますが、しかし、ユスティナがピアノを弾いた事実を証明する確かな資料や証言は今まで一つも確認されておらず、それどころか、彼女の生まれ育った時代背景や生活環境を詳しく調べると、ユスティナがピアノが弾けた可能性はほとんどゼロに等しかったと考えられます。
(※その詳細は『幼年期のグリーティングカードが語るショパンの家庭環境』で)。
ショパンの両親の音楽的素養については、後世の人々によってかなり美化して伝えられているようです。

ショパンはバッハ、モーツァルト、ベートーヴェン等の先人達とは違い、世襲制によって音楽家となる事を義務付けられていた訳ではありません。
ですからそのような英才教育も施されてはおらず、音楽に関しては全くの素人である両親にごく普通に育てられました。
ショパン家は、父ニコラがワルシャワ高等中学校の教師に就任したため、ショパンが生まれた翌年の1810年秋に、ジェラゾヴァ・ヴォラからワルシャワへ引っ越しています。
ニコラはそこで、貴族や士族の子息達を対象に寄宿学校を経営し始め、その際、勉学だけではなく、上流階級の礼儀作法や躾などにも気を配り、寄宿生の親達から非常に良い評判を得ていました。
ニコラはその一環としてピアノのレッスンも取り入れ、そのための教師としてジヴニーを雇っていたのです。
当時ピアノはまだ発展途上の新しい楽器でしたが、それがこの時代になってようやく一般にも普及し始め、上流階級の嗜みとしても流行していたからです。
ですから、ショパンにピアノを教えたのはユスティナでもルドヴィカでもなく、最初からジヴニーだったはずです。
つまり、音楽一家でもなければ上流階級でもなかったショパン家の子供達がピアノに接する機会が持てたのは、教師としてのニコラがこういった時代の流れに対応していたからで、だからこそ彼の寄宿学校の友人達もまた皆ピアノが弾けたのです。

ジヴニーは元々ヴァイオリンが専門で、作曲家でもなかったため、当時すでに、彼がショパンに教えられる事は何もなくなっていました。
ですからこのポロネーズの自筆譜は、言わば「ジヴニー学校」の卒業証書でもあったのです。
なのでショパンはこのあと、新しく創設されたワルシャワ音楽院の院長であるエルスネルから、個人的に作曲を学ぶようになります。


この《第13番》は、これ以前に書かれた2つのポロネーズ、《第11番 ト短調》《第12番 変ロ長調》に比べて、ずっとショパンらしいものになっているのが分かります。


ちなみに私は、謎とされているショパンの生年月日に関しては、「1809年3月1日」説を採っております(※その根拠はこちらで)。
なので、本稿ではそれに則ってショパンの年齢を数えています。


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この記事へのコメント

Nさん
2012年03月03日 11:31
すごいですね ためになりました
・・・・
2012年03月03日 11:43
きいてるだけでいやされる
トモロー
2012年03月03日 23:34
Nさん(・・・・さんも?)へ。
どうもありがとうございます。この曲は本当に聴いているだけで癒されますよね。ショパンがこの曲を献呈した師匠のジヴニーは、変わり者でひょうきん者のご老人だったと伝えられていて、今で言うところの「癒し系」の人物だったのではないかとも想像できるので、きっとショパンは、そんな彼の人柄をこのポロネーズに込めていたのかもしれませんね。

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