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zoom RSS ショパン:歌曲『酒宴』作品74-4 遺作(2台ピアノ版)

<<   作成日時 : 2012/03/26 12:02   >>

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♪今日の試聴BGM♪

ショパン作曲:歌曲《酒宴》 作品74-4 遺作(2台ピアノ版) by Tomoro




Chopin : Song"Hulanka (Drinking Song)" Op.74-4 /Tomoro

● 作曲年:1830年の秋
● 出版年:1859年
● 献呈者:なし


 【ジャンル解説】
一般にはほとんど知られていませんが、ショパンは生涯にわたって20曲もの歌曲を残しています。
その全てが祖国ポーランドの詩人の作品に曲を付けたもので、制作された理由は様々ですが、出版を前提にしたものは一つもなく、全てがプライベートの目的で書かれました。
したがって、これらは全て作曲者の死後に出版されています。

無伴奏で書かれたもの(※歌曲《マズル・どんな花》)が一つある以外は、いずれもショパン自身によるピアノ伴奏が付いています。
本稿では独自に、そのピアノ伴奏をそのままセカンド・ピアノ(※ステレオ左寄り)とし、メロディ・パートを1オクターブ上げてファースト・ピアノ(※ステレオ右寄り)に置き換え、2台ピアノ版としてお送りいたします。


 【作品解説】
歌曲《酒宴》(※原題の単語には「バカ騒ぎ、どんちゃん騒ぎ」の意味がある)は、作品74として最初にまとめられた16曲(後にもう1曲追加)のうちの第4曲目です。
これらは、ショパンの友人で音楽家でもあったフォンタナによって、一連の遺作集に引き続いて出版されました。
その際にフォンタナが付けた作品番号は、特に作曲順に並べられたものではありません。

この詩の作者はステファン・ヴィトフィツキ(Stefan Witwicki 1801−1847)で、ショパンは彼の詩から最も多くを作曲しており、現在10曲が知られています(※ただし、パリ時代にはその他にも数曲書いていたとも言われています)。

この曲の歌詞は以下の通りです。


  『酒宴』 ステファン・ヴィトフィツキ作(1830年出版)

 (村の)飲み屋の娘さん、薬屋の娘さん、
 神を恐れなさい、およしなさい!   
 ここでは笑うんだよ、なのに貴女は泣き、涙を流してる
 (それは)僕の上着に垂れ落ちた蜂蜜のように甘い。

 諦めないよ、キスするまでは!
 何と可愛いらしい目、何と可愛いらしい眉毛!
 小さな足、真っ白な歯、
 おい、僕の血を沸かせたじゃないか!

 友(男性)よ、何をそんなに考え込んでいる?
 悲しみの疫病神をやっつけろ!
 貧乏癖を見せずに、早く飲んでしまえよ、
 この世は悪霊で溢れている!

 酔ってふらついた脚じゃ、路に迷っちまうぞ、
 何て大きなケツの穴だ?(※何バカな事してるんだ?の意)
 嫁さんの叫び声で目が覚めて
 自分の家に辿り着く事になるんだろうよ

 飲めよ、さもなきゃ棒で叩くぞ!
 娘さん、時間のあるうちに急げ、
 仲直りするためだ、気にするな、
 僕らに蜂蜜をぶっ掛けてでも!



歌曲《酒宴》は1830年(※当時ショパン21歳)に曲が付けられたとされています。
初期稿と改訂槁の2種類があり、一般に知られているのは初期稿の方で、フォンタナ版として最初に出版されていたものがそれになります。
ナショナル・エディション(エキエル版)には初期稿と改訂稿の両方が収録されており、本稿ではそのナショナル・エディションによる改訂槁の方を採用しています。
ヴォーカル・パートは両稿ともほぼ同じですが、ピアノ・パートの前奏、間奏、後奏がそれぞれに改訂されており、若干短かめにまとめられています。
一聴して両者に優劣は感じられませんが、なにしろ5コーラス分も同じ間奏が繰り返されますから、できる事なら短いに超した事はないと思われたからです。


この《酒宴》の詩も、歌曲《願い》歌曲《好きな場所》の詩と同様、ヴィトフィツキの詩集『牧歌的な詩篇(Piosnki sielskie)』に収められていたもので、ショパンはこの詩集が出版された1830年に、ヴィトフィツキからこれを贈られています。
その際、その本の内表紙には、“フレデリック・ショパンへ 彼の才能を称賛する者より 1830年8月5日”と書き添えられていました。
ですから、ショパンがこの詩に曲を付けたのは、その8月5日以降の年内である事が分かります。

私は最初、この《酒宴》と言う題名と、それとショパンが曲を付けた1830年と言う作曲時期とを照らし合わせて考えた時、おそらくこれは、当時ショパンが祖国を発つ際に催された宴会の場で、人々から求められてこれを書いたのではないか?と想像していたのです。ところが、これはあとで知ったのですが、実は実際にそんな感じだったようなんですね。

と言うのも、ナショナル・エディションの解説によると、「ショパンの学友ヨゼフ・レインシュミットが彼の日記に記していたところによると、この歌曲は1830年の秋に書かれ、それは、ショパンが計画していた外国旅行の前に、彼のために催された告別晩餐会の一つにおいてだった。」とあるからです。

なるほど、そう思ってこの詩を読んでみると、当時のショパンの心情と言うものが、それこそありありと目に浮かんでくるような内容である事が分かります。


まず、最初の第1節、
 (村の)飲み屋の娘さん、薬屋の娘さん、
 神を恐れなさい、およしなさい!   
 ここでは笑うんだよ、なのに貴女は泣き、涙を流してる
 (それは)僕の上着に垂れ落ちた蜂蜜のように甘い。


別れの宴の場では、本当なら笑顔で見送って欲しいけれど、親しい女性(たとえば母や姉妹達)はどうしたって涙を流さずにはいられないものでしょうから、これは正にそんな様子と重なります。

次の第2節、
 諦めないよ、キスするまでは!
 何と可愛いらしい目、何と可愛いらしい眉毛!
 小さな足、真っ白な歯、
 おい、僕の血を沸かせたじゃないか!


これは、恋に関するものですが、実際のショパンは当時モリオール伯爵令嬢に片思いをしていて、しかし告白するつもりはありませんでしたから、したがってこの詩とショパンの恋愛は結びつきません(※コンスタンチア・グワトコフスカだったと言うのは実は作り話で、それについてはこちらで)。
しかし、この箇所の意味をそのまま「恋愛の成就への願望」とは解釈せず、「外国での音楽的成功」に結び付けて解釈すると、非常にしっくりくるものになります。
ショパンは昨年、初めて訪れた音楽の都ウィーンでは、思いがけずに開催された演奏会で好評をもって迎えられました。その事は、さぞかし音楽家としてのショパンの血を沸かせた事でしょう。ですからここでも、「諦めないよ、成功するまでは!」と言っているようにも受け取れるからです。

次の第3節、
 友(男性)よ、何をそんなに考え込んでいる?
 悲しみの疫病神をやっつけろ!
 貧乏癖を見せずに、早く飲んでしまえよ、
 この世は悪霊で溢れている!


これは、ショパンが祖国を発つにあたって、自分の中にある不安を打ち消そうともがいていた当時の心境そのものです。

次の第4節、
 酔ってふらついた脚じゃ、路に迷っちまうぞ、
 何て大きなケツの穴だ?(※何バカな事してるんだ?の意)
 嫁さんの叫び声で目が覚めて
 自分の家に辿り着く事になるんだろうよ


これは、もしもショパンが外国でうまくいかなかったとしても、祖国へ帰れば気心の知れた人々がなんだかんだと迎えれてくれるだろうと、そのような解釈にも取れます。

最後の第5節、
 飲めよ、さもなきゃ棒で叩くぞ!
 娘さん、時間のあるうちに急げ、
 仲直りするためだ、気にするな、
 僕らに蜂蜜をぶっ掛けてでも!


これは、それでも今はとにかく前に進むしかないのだと、そうしないと、昨年自分の事を温かく迎えてくれたウィーンの人々から忘れられてしまうと…、実際にショパンはそう考えていた事が当時の手紙に何度も書かれています。
ですから、ショパンはそのように自らを鼓舞し、またみんなからもそのように叱咤激励されていたでしょうから、おそらくそう言った事を、ショパン自身がこの詩から読み取っていたのではないでしょうか。

さて、どうしてそのようなニュアンスがこの詩から読み取れるのでしょうか?
と言いますのも、この詩の作者であるヴィトフィツキは、先輩の詩人であるミツキェヴィツから多大な影響を受けており、自らも詩作を通じて祖国の独立を強く願っていたからです。
つまりこの《酒宴》(バカ騒ぎ)と言うのは、当時のポーランドの、支配国ロシアに対する革命前夜を暗喩したものでもある訳です。
いずれにせよこの詩は、自己変革に伴う光と影を、宴会でのバカ騒ぎにたとえて表現していた作品なんですね。


ちなみに私は、謎とされているショパンの生年月日に関しては、「1809年3月1日」説を採っております(※その根拠はこちら)。
なので、本稿ではそれに則ってショパンの年齢を数えています。


Copyright © Tomoro. All Rights Reserved.

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