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zoom RSS ショパン:序奏と華麗なるポロネーズ ハ長調 作品3(2台ピアノ版)

<<   作成日時 : 2011/11/12 03:20   >>

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♪今日の試聴BGM♪

ショパン作曲:序奏と華麗なるポロネーズ ハ長調 作品3(2台ピアノ版) by Tomoro




Chopin : Introduction and Polonaise brillante in C major Op.3(for two pianos) /Tomoro

● 作曲年:1829〜30年
● 出版年:1831年
● 献呈者:ユゼフ・メルク


 【ジャンル解説】
ポロネーズはフランス語で「ポーランド風」の意味があり、その名の通りポーランドの民族舞踏の一種です。
マズルカ同様、農民や市民によって踊り継がれていたものが、やがて士族や貴族階級にまで広がって洗練されていったと言われています。
行進曲的な色合いもあり、様々な式典等で踊られる事が多いようです。


 【作品解説】
この曲は、ショパンが1829年にアントニンのラジヴィウ公爵の宮殿を訪問した際に書かれ、それについて、友人に宛てた手紙の中で次のようにコメントされています。
「ラジヴィウ公爵を訪問中、僕はチェロの伴奏を伴った「アラ・ポラッカ」を書いた。それは貴婦人向けの、華麗なる上流階級のサロン用の小品に過ぎない。僕はワンダ姫がそれを練習しているのが好きだ。彼女にレッスンしてあげたいと思っている。彼女は17歳の美しい少女で、だから彼女のデリケートな指を導くのは魅力的だ。しかし冗談はさておき、彼女は本当に音楽的な感性を持っていて、だから、どこでクレッセンド(だんだん強く)、ピアノ(弱く)、ピアニッシモ(とても弱く)と弾くべきかなんて、言う必要がないんだ。」
(※『1829年11月14日付の『ティトゥス・ヴォイチェホフスキ宛の手紙』より→全文はこちら


実は、ショパンの《チェロとピアノのための序奏と華麗なるポロネーズ ハ長調 作品3》には、ショパン自身の編曲によるピアノ独奏版なるものが存在していたと言われていたのですが、がしかし、どう言う訳かその楽譜は、待てど暮らせど一向に出版される様子はなく、結局最新のナショナル・エディション(エキエル版)にも採録されませんでした。
私がその版について知ったのは、それがあるCDに録音されて発表されていたからです。
そのCDと言うのは、ヨーヨー・マ(チェロ)、パメラ・フランク(ヴァイオリン)、エマニュエル・アックス(ピアノ)によるショパンの室内楽集で、アックス自身による解説文に次のように書かれていました。

「ショパンはワンダ姫の才能あるいは美しさに心を動かされたに違いない。なぜなら、彼は「序奏と華麗なるポロネーズ」のピアノ独奏版を残しているからである。これはごく最近、ポーランドの著名な音楽学者、著述家、ピアニストであるヤン・ウェーバーによって発見されたものである。昨年、彼が悲劇的な死を遂げる前に希望していたことのひとつが、この作品を彼の友人で現在パリに住んでいるすぐれたポーランド人ピアニスト、エヴァ・オシンスカによって最初の録音をすることだった。このDCに収められたのが、その録音である。私の知る限りでは、これが、新たに発見された手稿譜の最初の録音である。」


このCDの主音源は1992年に録音されていますが、ボーナス・トラックの独奏版のみ1989年の録音です。
この「序奏と華麗なるポロネーズのピアノ独奏版」の楽譜について、現在私にはこれ以外に全く情報がないため確かな事は分かりません。
しかしながら、私が想像するに、どうもこのヤン・ウェーバーなる人物の発見したとか言う楽譜が、実のところショパンの自筆譜である確証が得られていないか、もしくは得られなかった可能性があるのではないでしょうか?
なぜなら、もしもその楽譜が本物であるなら、正に歴史的発見であり、とうに出版されていてもいいはずですし、また、それがナショナル・エディションに採録されないはずもないからです(※たとえば協奏曲などではそれらが採録されているのですから)。

と言う訳なので、この曲には事実上1台ピアノ版などの別編成バージョンは存在していませんが、本稿では独自に、これの室内楽版を2台ピアノ版としてお送りいたします。
なお、楽譜はナショナル・エディション(エキエル版)を用い、チェロ・パートをそのままファースト・ピアノにしてステレオ右寄りに、従来のピアノ・パートをセカンド・ピアノにしてステレオ左寄りに配置してあります。


この曲の序奏部分は、翌年の春にあとから付け加えられたもので、それについては、上記の友人宛の手紙で次のように書かれています。
「レヴィツキの所でやる事になっている音楽夜会の計画は順調に進んでいる…(※中略)…チェロを伴う僕のポロネーズには、カチンスキ(※チェリスト)のために特別にアダージョの序奏を付け加えた。僕らはそれでリハーサルしたが、全てうまくいったよ。」
(※『1830年4月10日付のティトゥス・ヴォイチェホフスキ宛の手紙』より→全文はこちら

この発想は、のちの《ピアノとオーケストラのためのアンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ 変ホ長調 作品22》でも活かされており、正に室内楽からコンサート・ホール向けに拡大されたと言えるでしょう。

ショパンはこれまで9曲ものピアノ独奏用ポロネーズを書いてきましたが、若干8歳の時に書かれた最初の《第11番 ト短調》のみが作品番号なしでリアル・タイムで出版され、それ以外は全て生前には出版されませんでした。
当時のショパンは、ポロネーズにしろマズルカにしろワルツにしろ、こういった舞踏音楽はあくまでもダンスのための伴奏であって、芸術的な「作品」とは考えていなかったからです。

そういう意味で、この《序奏と華麗なるポロネーズ》は、ショパンが初めて自ら作品番号を付して生前に出版した舞踏音楽と言う事になります。
今までのピアノ独奏用ポロネーズになかった特徴としては、ノクターンを思わせる独立した序奏と長い集結部を伴っていると言う点で、単なるダンスのための伴奏を脱し、形式的ながらも「作品」としての体裁を整えている様子が見て取れます。

ショパンは生涯に室内楽曲を5つしか残していませんが、その中でも、この曲は比較的演奏される機会が多いようです。
ただし私は個人的に、その5曲のうち《フルートとピアノのための「シンデレラ」の主題による変奏曲》はショパンが書いたものではないと考えていますので、実質的に4曲だと思っています。
(※その根拠はこちらで)



ちなみに私は、謎とされているショパンの生年月日に関しては、「1809年3月1日」説を採っております(※その根拠はこちらで)。
なので、本稿ではそれに則ってショパンの年齢を数えています。


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コメント(9件)

内 容 ニックネーム/日時
僕はショパンが大好きです、彼の人生と音楽。
このブログは内容が深くすごいです。
むろ
2012/02/17 00:16
むろさんへ
どうもありがとうございます。私は生まれて初めてコメントなるものを頂きまして、とても感激しております。ショパンは世界的にも人気のある作曲家なので、彼の人生と音楽はもはや語り尽くされた感がありますが、私なりの視点で更に深く掘り下げられたらと思い、当ブログを始めました。今後もより精進していきたいと思っておりますので、その都度叱咤激励していただけたら幸いに存じます。
トモロー
2012/02/17 02:25
youtubeに問題のピアノ独奏版がupされていました。なんと楽譜(出版譜)付きです。
http://www.youtube.com/watch?v=TfGmCqIiah0
そのup主のコメント(英語なのですが)に、この件についての有力な情報があるようです。私は日本語しか読めないので確かなことを言えませんが、意外な名前が出てきています。
nao
2013/06/17 04:27
nao様へ。
耳寄りな情報を有難うございます。
この音源自体は、私が記事内で紹介したCDのものですね。
アップ主のコメントによると、このピースは、オリジナルのチェロとピアノのためのバージョンから、チャールズ・チェルニーによってピアノ独奏版に編曲され、それが個人のコレクションの中から発見された…とありますねぇ…。
と言う事は、ショパン自身による編曲ではないと言う事になり、アックスがCDのライナーノートに書いていた典拠説明とは全然違ってきてしまいますね…。
それに、このチェルニーって、あのツェルニーの事なのでしょうか? あのツェルニーのファーストネームはチャールズ(Charles)ではなくてカール(Carl)だと思うのですが…?
いずれにせよ、ますます訳が分からなくなってきてしまいました…(トホホ…)。
トモロー
2013/06/17 08:33
チャールズはカールとイコールのようです。英米ではカールを「Charles」と読み書きするとのことです(フランス語綴りシャルルの英語読み)。
ツェルニーの編曲としてレコーディングしているディスクもあるようです。URLは面倒なので、「kobakoshiブログ ショパン op.3」で検索したページにそのCDが紹介されています。
オシンスカの初録音以後、小山実稚恵がこの編曲をレコーディングしていますが、そのライナーノーツの解説者はこれについて何も知らないようで、アックスの記述以上のことは何も書いていません。
いつツェルニーの編曲と判定されたのかを知りたいところですね。ガッカリな結果ではありますが、大事なことは情報を広く行き渡らせてほしいものです。ご推測は「当たり」ということですね。
nao
2013/06/17 13:42
nao様へ。
なるほど…やっぱりあのツェルニーでしたか…。
とても参考になるお話を色々と有難うございます。
それにしても、どうしてショパンにはこの手の胡散臭い話が尽きないのでしょうか…?
ファンとしては複雑な心境です。
トモロー
2013/06/17 15:57
ところで、この曲が収録されているナショナル・エディション23巻の目次をネットで見たら、ポロネーズのみの初期稿というのが収録されています。どこがどう違うのでしょうか?
nao
2013/06/24 01:20
nao様へ。
これはアレですね。単に曲名を端折っちゃってるだけですね。
実は私も、この楽譜をネット通販で買う時にそれが気になってて、「これって何だろう?もしかして独奏版の事かな?」なんて思いながら注文したものでしたが、楽譜が届いて中を見てみたら、単に、しっかり「《ピアノとチェロのための序奏と華麗なるポロネーズ 作品3》の初期稿」でした(←もちろんガッカリ…)。
なので、それを聞いてnao様もさぞガッカリされてしまった事と心中お察しいたしますが、どこがどう違うのかと申しますと、ピアノ・パートと楽曲構成は全く一緒で、全編に渡ってチェロ・パートだけが違っています。ところどころ大小様々に違っていて、いちいち指摘し切れないほどです。場所によってはけっこう大幅に改訂されております(そのうち手が空いたら音源を作ってアップしようかしら…遠い将来になりそうですが…)。
ただ、面白いのは、ピアノ・パートが全く同じと言う事は、やはり最初にピアノが完成され、後からチェロ・パートをあれこれと推敲していたのだな…と言う作業工程が見て取れると言う事ですね。
トモロー
2013/06/24 03:55
私が持っているこの曲の楽譜は、音友社『新編世界大音楽全集』収録のものですが、チェロのパートだけにやけにossiaがあり、その方が複雑で難しくなっています。リストと違ってショパンの楽譜には通常ossiaはほとんどないので、それを少し不思議に感じていましたが、これで小さな謎が解けたような気がします。そのossiaになっているのが初期稿のようです。(ガッカリではありません 笑)
この曲のチェロパートが譜面に忠実に演奏されることは稀なので、初期稿はチェロの音色で音源を作ってアップしていただきたいですね♪
nao
2013/06/24 14:11

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