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zoom RSS ショパン:演奏会用大ロンド「クラコヴィアク」 ヘ長調 作品14(ピアノ独奏版)

<<   作成日時 : 2011/06/19 10:28   >>

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♪今日の試聴BGM♪

ショパン作曲:演奏会用大ロンド「クラコヴィアク」 ヘ長調 作品14(ピアノ独奏版) by Tomoro






Chopin : Krakowiak. Grande Rondo de Concert in F major Op.14 (for one piano) /Tomoro

● 作曲年:1828年
● 出版年:1834年(オーケストラ伴奏版)/2010年(ピアノ独奏版)
● 献呈者:サピエフ公爵家出身にしてアダム・チャルトリスキ公爵の令夫人(アンナ・チャルトリスカ公爵夫人)


 【ジャンル解説】
ロンドは、「輪舞曲」、「回旋曲」などと訳される通り、A、B、A、C、A…というように、一つの旋律(ロンド主題)の間に様々なエピソードを挟みながら繰り返される音楽形式の曲で、ベートーヴェンの《エリーゼのために》などが、ロンド形式の代表的な作品です。
また、クラコヴィアクは、ポーランドのクラクフ地方を起源とする2拍子の舞踏曲です。


 【作品解説】
この曲の題名は、正式には《オーケストラ伴奏付きピアノのための演奏会用大ロンド、クラコヴィアク》で、一般的には《演奏会用(大)ロンド「クラコヴィアク」》、あるいはショパンが手紙の中でそう呼んでいた事から《ロンド・ア・ラ・クラコヴィアク》などとも呼ばれています。

本稿では今回、この曲をナショナル・エディションによるピアノ独奏版(1台ピアノ版)でお送りいたします。


ショパンにとって、オーケストラを伴った作品としては、
 1.《「お手をどうぞ」による変奏曲 変ロ長調 作品2》
 2.《ポーランド民謡による大幻想曲 イ長調 作品13》
に続いて3番目の作品になります。
前2作が、他の作曲家のテーマを使ってオーケストラ・アレンジの習得を兼ねていたものだとすれば、今作は自作のテーマでそれを試したものと言う事になり、それらの段階を経た後、いよいよ最終目標であるピアノ協奏曲へと向かう事になります。

またこの曲は、ショパンのロンド作品としては、
 1.《ロンド ハ短調 作品1》
 2.《マズルカ風ロンド ヘ長調 作品5》
 3.《ロンド ハ長調 作品73 遺作(1台ピアノ版)》
に続いて4作目となります。
曲の雰囲気としては、同系統の《マズルカ風ロンド ヘ長調 作品5》よりも、前作に当たる《ロンド ハ長調 作品73 遺作(2台ピアノ版)》をスケール・アップしたような趣きがあり、ポーランド的と言うよりはむしろ、もっと広い意味でスラブ的、あるいは東欧的な叙事詩とも言えるような壮大さがあります。

ショパンは、これを作曲した19歳当時、友人宛の手紙に次のように書いています。
「《ロンド・ア・ラ・クラコヴィアク》の楽譜は出来上がったよ。序奏は独創的だ、御伽噺にでも出てきそうな滑稽極まりないコートを着た僕よりずっとね。」
(※『1828年12月27日付のティトゥス・ヴォイチェホフスキ宛の手紙』より→全文はこちら


この曲が初演されたのは翌1829年の夏で、それはショパンにとって思いがけない形で実現しました。

ショパンはその年の7月、ワルシャワ音楽院の院長エルスネルから、「格別な才能、音楽の天才」というこれ以上ない成績評価を授かって卒業します。
それで父ニコラは、息子の海外進出に備えて政府に助成金の請願書を出していたのですが、それにも関わらず、その申請は却下されてしまいます。
その時の内務大臣からの返事には、その具体的な理由までは書かれていませんでしたが、「この種の芸術家を援助するのに、公的資金を当てるべきではないとの結論に達した」と言うような事が書いてありました。
「この種の」という言い方はつまり、ショパンの音楽活動がサロン向けのピアノ曲に偏り過ぎていて、交響曲やミサ曲、あるいはオラトリオと言った大曲を書いていないと言う事を意味しています。

何しろ、この時点でショパンが作曲していた最も大きな曲はと言えば、せいぜい《「お手をどうぞ」による変奏曲》《ポーランド民謡による大幻想曲》、そして《演奏会用大ロンド「クラコヴィアク」》と言った、単一の協奏的ピアノ作品どまりだったのですから無理もありません。
と言うのも、たとえば、ワルシャワ音楽院の先輩でショパンの兄弟子に当たるトマシュ・ニデツキなどは、すでに交響曲やミサ曲をものにしており、それによって前年に、苦もなく奨学金を得て現在ウィーンに留学していたからです。
当時はまだ作曲だけで生活できるような時代ではなく、音楽家の一番の収入源は何と言っても演奏会です。
しかも演奏会ではまだまだそう言った作品が主流でしたから、それなのにオペラが書けそうにないとなると、要は金にならないし、文化的な貢献度も低い芸術家と見なされてしまうようです。

モーツァルトの時代に登場したピアノという楽器は、ベートーヴェンの時代に進化発展を遂げ、そしてショパンの時代に花開こうとしていました。
ショパンは、そんな新しい時代の申し子として未知の才能を磨き、エルスネルもそれを理解して後押ししていたのですが、この時ばかりはそれが裏目に出てしまう形となりました。
政府がそのような先見の明で動くはずもありませんから、このような大臣の決定というのは、いかにもお役所仕事らしいものでしかなく、それは昔も今も変わりなかったのです。
ですから、当時のショパンが過激派と付き合っていたからではないか?とか言うようないかがわしい説は、後世の伝記作家による創作です。


それでショパンは、卒業後の海外進出はとりあえず諦めざるを得ませんでした。
その代わり、友人達4人がウィーン旅行を計画していたのに便乗して、彼らと共に短期間ウィーンへ出かける事にします。
この時の旅行の様子については、ショパンが家族や友人に送った手紙にその一部始終が報告されています。

ショパンにとって、この旅行の一番の目的は、取り急ぎ、昨年《「お手をどうぞ」による変奏曲》《ピアノソナタ ハ短調 作品4》の出版を依頼して楽譜を送っていた楽譜出版者ハスリンガーに会って、直接お伺いを立てる事でした。
そのために、エルスネルがハスリンガー宛に一筆したためてくれていたのです。

無名のポーランド人の作品を出版する事に懐疑的だったハスリンガーでしたが、ウィーンを訪れたショパン本人の演奏でそれを聴くと、態度を一変させます。
単に楽譜を見ただけでは分からなかったものが、ショパン自身の演奏を聴く事によってその全てが理解できたと証言する人は多いのですが、この時のハスリンガーも正にそうだったのです。
それでハスリンガーは、ショパンが公開の場でこれを演奏する事を条件に楽譜の出版を約束しようと、しきりに演奏会を開くよう勧めます。
ただし、ショパンが当時まだ本格的にプロ活動をしていなかったため足元を見て、演奏会の出演料も出さず、出版料も払わないが…、と言う但し書きを付けてはいましたが…。

しかしショパンは、あまりにも突然の話でさすがに怖気づいてしまい、最初は演奏会を開く事を拒んでいました。
ショパンはそれまで、主にワルシャワで慈善演奏会に客演するぐらいしか公開演奏会の経験がほとんどなく、しかもここは本場のウィーンであり、何から何まで気心の知れていたワルシャワでやるのとは訳が違います。
ところが、ハスリンガー同様ショパンの演奏を聴いた他の人々からも説得され、とうとうやらない訳にはいかなくなります。
一番強く説得したのは、ジヴニーから引き継いでショパンにピアノやオルガンを教えていたかつての恩師、ヴィルヘルム・ヴェルフェルでした。
ヴェルフェルはその当時、ウィーンのケルントナー門の王立劇場で指揮者を務めていたのです。
そのお陰もあって、演奏会の計画も準備も、あれよあれよという間に進んで行きます。

さらにヴェルフェルは、ショパンがピアニストとしてだけでなく、作曲家としてもやっていくつもりなら、《「お手をどうぞ」による変奏曲》だけでなく、《演奏会用大ロンド「クラコヴィアク」》もやるべきだと主張します。ショパンは、自分の最新作であるこの曲の楽譜を、ハスリンガーに出版の交渉をするために持参していたのでした。
もう1曲《ポーランド民謡による大幻想曲》もあったのですが、そちらは《「お手をどうぞ」による変奏曲》同様、他人のテーマを元にした言わば編曲作品ですから、作曲家としての真価を問うのであれば、当然、完全にオリジナルの《演奏会用大ロンド「クラコヴィアク」》になる訳です。


ところが、ショパンが携えて来た手書きの楽譜は、本人にしか分からないような記譜がなされていたために、本番を3日後に控えたリハーサルでは、オーケストラが混乱し、団員達から怒りを買う羽目になってしまいます。

〜次回(同曲の2台ピアノ版)へ続く〜


ちなみに私は、謎とされているショパンの生年月日に関しては、
「1809年3月1日」説を採っております(※その根拠はこちらで)。
なので、本稿ではそれに則ってショパンの年齢を数えています。


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